はじめに
トヨタ博物館の1939年式パッカード・トゥエルヴです。トヨタ博物館内にはいくつか特等席と呼べそうな展示場所がありますが、このパッカード・トゥエルヴが展示されてあるひな壇も、間違いなく特等席の1つでしょう。私がこれまで足を運んだ日本国内の自動車博物館で、パッカードのトゥエルヴが展示されてあるのはトヨタ博物館だけでした。
大統領が使用したその車
トヨタ博物館にあるパッカード・トゥエルブはルーズヴェルト大統領が実際に使用していた車両なので、ひな壇に展示されるのも当然と言えば当然です。防弾仕様になっているため、ガラスは3cmの極厚仕様です、是非じっくり近くに寄って確認してみてください。
パッカードの12気筒エンジンといえば1915年から1923年に造られたツインシックスが有名で、1924年から12気筒は小休止し、直列8気筒へと移行しました。そして不況はやがて終わるだろうと目論んでの新型エンジン開発となり、このトゥエルヴへと至ります。ただ、このトゥエルヴは1932年の販売時はまたツインシックスで、翌年にトゥエルヴへと改名されています。販売テコ入れのために改名でした。不況は想像を超えていたのでしょう。
博物館による車両説明
トヨタによる公式の車両説明は次の通りとなっています。
『1915年に登場して一躍’20年代の花形になったパッカード・トゥインシックスは、’30年代に向かって大きな変貌を遂げるとともに、名前もパッカード・トゥエルヴに変更されました。そして、この新しいモデルを語るとき、なくてはならない人物がアメリ力大統領フランクリン・デラノウ・ルーズヴェルトであろう。彼もまた、パッカードを選び、その信頼性と豪快なパワーに魅せられたひとりだったのである。この専用車は、12気筒がのせられた最後の年、1939年につくられたもので、格式の高いロールソン(ロールストン)がボディを架装。防弾ガラスをはじめ大統領専用の補強は装甲車並みだが、軽快なツーリングボディはルーズヴェルトの笑顔とともに華やかなアメリ力の象徴である』(トヨタ博物館)
『アメリカ人が胸を張って世界に誇れるアメリカの名車のひとつ、それがパッカードです。それは優雅なスタイル、信頼性が高く静かなエンジン、そして長い寿命をほこりました。パッカードを生み出したのは、電気器具を造る会社を経営していたジェームズパッカードという人です。1号車の完成は1899年のことでした。パッカードが名声を獲得するのは1915年にV型12気筒エンジンを積んだツインシックスを発表してからです。当時は豪華車といえどもせいぜい8気筒までだったので、量産車として史上初の12気筒エンジンの登場は驚くべきことでした。そしてそれはアメリカの大統領や、ロシアの皇帝をはじめ世界各国の王室や元首にも愛用されることになります。1930年になるとツインシックスは大きな変貌を遂げて2世代目となり、それはトゥエルヴという名前で販売されます。展示車は、12気筒がのせられた最後の年、1939年につくられたものです。防弾ガラスをはじめ大統領専用の補強は装甲車並みですが、軽快なツーリングボディはルーズベルト大統領の笑顔とともに華やかなアメリカの象徴です』(トヨタ博物館)
『アメリカ最高級車の地位を得たパッカード・ツインシックスは、大恐慌の影響やキャデラックV16などのライバルの登場に対応すべく、1930年代に入って第2世代に突入した。トヨタ博物館に展示されているのは、その時期に製作され、フランクリン・デラノウ・ルーズベルトが実際に使用したロールソン製ツーリングである。ルーズベルトは、歴代の大統領、ウィルソンやハーディング、そしてフーバーらと同様に、パッカード12気筒に魅せられていたのだ。第2次世界大戦前のアメリカにおいて、歴代大統領に公用車として使用される栄誉に浴したのは、まさにアメリカ最高級車の面目躍如だったに違いない。しかし、パッカード・トゥエルブのV型12気筒エンジンに畏敬の念を示したのは、F.D.R.を始めとするアメリカの歴代大統領たちだけではない。実はこのV12ユニットには、イタリアのエンツォ・フェラーリとフェラーリ最初のエンジンを設計したジョアッキーノ・コロンボにも感銘を与え、彼らが自社のエンジンをV12とする決断に決定的な影響を与えたという有名なエピソードもあるのだ』(GAZOO)
パッカードの中古車をお探しの方へ
パッカードの中古車はグーネットやカーセンサーのようなオープンな中古車サイトでも少数ながら販売されています。2017年4月時点でも静岡県のオートショップタキーズから1933年式の個体が1台販売されていますので、ご確認いただければと思います。