はじめに
那須クラシックカー博物館の1954年式ホールデンFJです。私がこれまで足を運んだ国内の自動車博物館で、ホールデンの車両が展示されていたのはこの那須クラシックカー博物館だけでした。そして、私にとってこのホールデンというメーカーは、トップギアでドリフトしていたユートの印象が強いメーカーです。
オーストラリアのお国柄感じる車
ホールデンのユートはピックアップトラックですが、まるでBMWのM3をピックアップに改造したかのような、クーペのような出で立ちをしています。しかもFRでハイパワーという、他では見られない車だったので、トップギアを見てとても印象に残りました。ホールデンはオーストラリア唯一の国産メーカーとのことですが、なるほどアメリカ車でもなければヨーロッパ車でもなく、といって日本車でもないオーストラリア独自の背景が感じられる車です。
そして那須クラシックカー博物館でこのホールデンFJを見つけ、おそらくはこの頃からすでにユートへと続くであろう、オーストラリア独自の進化が始まっていたのかと考えると、まじまじと見入ってしまいます。
このホールデンFJはホールデン車としては2番目のモデルで、ベンツで例えるならベンツ・ヴィクトリアに該当します。ボディタイプは展示車両のセダンの他に、パネルバンとクーペユーティリティが存在しており、このクーペユーティリティというのが後のユートに繋がるクーペのようなピックアップトラックです。この時すでに、オーストラリア車としての歴史は始まっています。
ちなみに、トップギアに登場したユートは、ホールデンのチューニング部門であるHSV(Holden Special Vehicles)によって公式にチューニングされたマルーでした。シリーズ13のエピソード7に登場したときには、ドラッグレースでアウディのS4を打ち負かし、白煙を巻き上げながら楽しげにドリフト走行を披露し、トップギアのテストトラックではアストンマーティンDB9と同タイムを記録しています。さらにシリーズ22のエピソード2に登場した鉱山レースでは、スティグ(の従兄弟)が運転するとはいえ、BMWのM6グランクーペや日産GT-R、ベントレーのコンチネンタルGT V8Sより速く駆け抜けていました。
気になってスペックを調べてみると、鉱山レースに興じた現行ユート(マルー)の6.2リッターV8エンジンは430キロワット、つまりドイツ車カタログ表記に従ってフランス馬力で表示するなら、585馬力に達していました。クーペスタイルのピックアップでこの性能を他で見たことがありません。オーストラリア車ならではのハイパフォーマンスカーと言えるでしょう。
車を通してお国柄が垣間見える、想像が楽しめる、そんな楽しげなメーカー「ホールデン」です。
ホールデンの中古車をお探しの方へ
上述の通り、この戦後間もない時期のホールデンは日本でほとんどお目にかかれません。オープンな中古車市場に出ることもまずないはずで、クローズドなアプローチを試みる他ないでしょう。
一方で、トップギアで出たような新しめのホールデンでしたら、グーネットやカーセンサーでも売り出されていますので、そちらをご確認いただければと思います。