はじめに
河口湖自動車博物館のベンツ・ヴィクトリアです。私がこれまで足を運んだ日本国内の自動車博物館を振り返っても、ベンツのヴィクトリアが展示されてあったのはこの河口湖自動車博物館だけでした。パテントモトールヴァーゲンの隣りが定位置となっているように、ヴィクトリアはパテントモトールヴァーゲンに続くベンツとして2番目のモデルとされてます。
パテントモトールヴァーゲンからの進化
ヴィクトリアは3輪だったパテントモトールヴァーゲンと違って前輪も2輪の4輪自動車となり、パテントモトールヴァーゲンでは後輪のみだった板バネが前輪にも備わっています。また、新たにランプも装備されているので、ヴィクトリアでは夜間走行のことを考える余裕も出てきています。
後付けのスリーポインテッドスター
なお、この展示車両フロントのスリーポインテッドスターに違和感を覚えた方は、きっと勘が鋭い方でしょう。1898年当時のベンツはまだスリーポインテッドスターを冠するダイムラーと合併していませんし、そもそもダイムラーがドイツの帝國特許庁にスリーポインテッドスターを意匠登録したのは1909年のことで、その利用を開始したのも翌1910年となります。
つまり、このスリーポインテッドスターが印されたこのヴィクトリアのフロントプレートは後から取り付けられたもので、ヴィクトリアが作られた当時はベンツ自体の月桂樹のエンブレムもまだ存在していません。
フロントにある”V.C.C.”とは”The Veteran Car Club”という英国クラシックカークラブの略で、この団体が当該車両を1898年式のベンツ車であると認定しているということで、フロントにベンツマークのプレートが取り付けられています。この団体では1904年までを”Veteran Era”、1905年から1917年までを”Edwardian era”と区切り、Veteran時代に生産された車をVeteran Carとしていますが、他の書籍や団体によっては1917年までに生産された車までがまとめてVeteran Carと分類されることもあります。
ベンツ時代の中古車をお探しの方へ
ベンツ時代の車両はグーネットやカーセンサーのようなオープンな中古車市場に出てくることはほとんどないと思われます。
ただ、ジーライオンミュージアムのように、博物館の所蔵車両と同等と思しき車両をグーネットやカーセンサーで大量に販売している場合もあるので、一度ご確認いただくのも良いかもしれません。
なお、海外のオープン市場に目を転じると、bonhamsというオークションサイトで1893年式の”Benz Victoria vers”が350万円ほどで出されていましたので、ご参考までに。